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ナンバーワンヒットを連発した97年=東京ドーム、西山麗氏撮影

 90年代後半に大ブレークし、社会現象にまでなった安室奈美恵。31歳になった今、女の子があこがれる抜群のスタイルはそのままに、小室哲哉プロデュース時代とは異なる音楽性・ビジュアルを打ち出し、2度目のピークを迎えようとしている。「21世紀型アムロ」の強さは、どんなところにあるのだろうか。(藤崎昭子)

 今の勢いを、数字でみてみよう。3月には3曲入りCD「60s70s80s」で9年ぶりにシングルチャート1位を獲得。7月発売のアルバム「ベスト・フィクション」は10年ぶりに100万枚を突破、安室は10代、20代、30代と三つの年代でミリオンヒットを飛ばした日本初の歌手となった。25日に始まった全国ツアーは40万人を動員する予定だ。

 音楽評論家の萩原祐子さんは「表現力がダントツ。痛みを知ってるから優しくなれるとか、そんな生ぬるいものを超えている」と語る。しかし歌唱以上にプロの矜(きょう)持(じ)を感じるのは、安室の攻めの姿勢だという。

 「90年代には、小室哲哉やつんくなど旬のプロデューサーが仕掛けさえすればヒットするという幻想があったが、01年に小室の手を離れたのを境に、彼女はセルフプロデュースに能力を発揮し始めた。制作集団の見事な編成に、彼女のそのときどきの主張を感じる。03年のユニット『スイート・シーク』ではヒップホップのジブラやm―floのバーバルとも、いい化学反応が生まれた」

 また、「詞も大部分はプロに任せている。自分で作詞しなければアーティストではないという呪縛にとらわれていないのも強み」と萩原さん。自分探しの迷宮に足をとられることなく、作品の世界を広げられるというわけだ。かつて阿木燿子の詞がアイドル山口百恵を大人の女へと変身させたように、michicoやNao’ymt(ナオワイエムティー)の挑発的な詞が安室の方向性を代弁する。

■超一流とコラボ

 コラボ時代の精華は、P&Gのヘアケア用品「ヴィダルサスーン」のテレビCMだろう。スタイリストは、映画「プラダを着た悪魔」を担当したパトリシア・フィールド。ヘアスタイリストは、ディオールのショーも手がけるオーランド・ピタ。P&Gジャパンのブランドマネージャー、木葉慎介さんは「超一流のプロとのコラボが成立する、最も時代感・あこがれ感のあるプロフェッショナル」と安室起用の理由を説明する。

 切りそろえた前髪でバービー人形風、あるいは波打つ長髪に黒いコルセットで演じたショーガール。自身を素材としてプロの手に委ね、路線変更を恐れない勇気は、御年50歳のマドンナにも通じる。

 作家の柴崎友香さん(35)は、92年のデビュー直後、安室が雑誌「オリーブ」に登場したときからウオッチしている。芥川賞候補になった「主題歌」を始め、かわいい女子に対する鋭い観察眼を小説やコラムに発揮しているが、安室はいま一番かわいいと思う存在だという。

■女がほれる存在

 「最初はとにかく顔の小ささと手足の長さに目を疑った。モデルのような長身というわけでもないし。未知の生き物に思えました」。以来、アムラーたちの少し上の世代として距離を置いて見ていたが、「スイート・シーク」で再注目したという。

 「彼女ならもっといろんな風に自分を遊べるはずという期待に次々と応えてくれた。好きなことに挑戦し続けて『最高のつくりもの』として自分を築いている。ピンクパンサーと共演したり、アルバムの特典アニメで声優としてセルフパロディーをしたり。見ていても楽しい」。カラオケで消費されることを拒むようなダンス音楽への挑戦にも潔さを感じるという。

 「聖子ちゃん」の残像を求めるファンに応え続ける松田聖子も偉大だが、ときにムチを構えてファンのイメージを裏切り続けるところに、女子がほれる「安室ちゃん」の真価があるのかもしれない。

 その意気に呼応し、ツアーの皮切り千葉・幕張にはミニスカートやショートパンツで気合を見せる女の子が詰めかけた。ただ、記念撮影用に置かれた「奈美恵ちゃん等身大 顔くりぬき看板」に臆(おく)せず自分の顔をはめられる子は、きっと多くはないだろう。

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■安室奈美恵 年表

1977年:9月20日、沖縄県で生まれる

  92年:スーパーモンキーズの一員としてデビュー

  95年:ソロに。小室哲哉プロデュースで「Chase the Chance」などのヒットを飛ばす

  96年:アルバム「SWEET 19 BLUES」は300万枚突破。「Don’t wanna cry」で日本レコード大賞

  97年:TRFのダンサーSAMと結婚

  98年:約1年の休業。男児を出産

  99年:母を亡くす

  00年:九州・沖縄サミットで「NEVER END」を歌う

  02年:離婚

  03年:ユニット「SUITE CHIC」に参加

  07年:アルバム「PLAY」で7年ぶりに首位獲得

  08年:シングル「60s70s80s」、アルバム「BEST FICTION」が大ヒット

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